魯桃桜(ろとうざくら)と図書館

rotozakura

魯桃桜は早春に咲く花として有名で、毎春のように開花すると同時に、長野市の春を告げる桜として新聞やテレビなどで報道されます。長野市立長野図書館(長野市長門町)にある魯桃桜が有名ですが、実は県立長野図書館の東側の庭にも魯桃桜が植えられており、毎春見事な花を咲かせています。この魯桃桜は当館がもともと現在の長野市立長野図書館の場所に旧県立図書館としてあった頃に植えられていたものを移植してきた樹です。
魯桃桜の歴史は旧県立図書館とのかかわりをスタートとして、県内の図書館と深く結びついてきました。そこでこのページでは、県立図書館の魯桃桜についての豆知識を紹介します。

・ 魯桃桜とは?

・ 県立図書館との関わり

・ 名前の由来

・ 今も天然記念物?

・ 長野県内の図書館との関わり

・ いつ頃咲くの?

魯桃桜とは?

名前に「桃」と「桜」が付いていてどちらなのか疑問に思う方も多いかと思いますが、魯桃桜は正確には「桃」の仲間です。
落合照雄氏、久保田英夫氏による論文が昭和37(1962)年に発表されており、その中で魯桃桜は
「モモ亜属Amygdalusに属する学名Prunus Davidiana(CARR.)FRANCHET
和名:ノモモ、ハヤザキモモ 英名:David peach」
であるとの調査結果があります。
また、旧県立図書館が、魯桃桜に実生苗ができることを発見しました。それまでは魯桃桜には実がならないと信じられており、接木による移植を行っていました。

県立図書館との関わり

旧県立図書館の庭に初めて魯桃桜が植えられたのは、昭和8(1933)年のことです。
当時の県立図書館長乙部泉三郎氏が植物学者の小山海太郎氏と相談して、当時の桜井村(佐久市桜井)の桜井尋常高等小学校の中庭にあった珍しい桜の木の接穂を取り寄せ、埼玉県の安行へ送って接木をしてもらい、それを旧県立図書館の庭に植えたとされています。このとき植えられたのは7本で、これらの「桜」は非常に発育が良く、たちまち長野市の春を告げる「図書館の桜」として有名になりました。
現在の県立図書館(長野市若里)にある魯桃桜は、昭和54(1979)年に移転してきた際に旧県立図書館のあった場所(長野市長門町)の実生苗(三世)を移植したものです。

名前の由来

「図書館の桜」は長野市の春を告げる桜として有名になったことで、県の天然記念物に指定しようとの話が持ち上がったそうですが、この桜は桃に近い植物で当時の植物図鑑にも載っていませんでした。
そこで小山海太郎氏は改めて佐久市桜井へ行ってこの木の由来を調べたところ、はっきりしたことはわかりませんでしたが、「日露戦争に行った軍人が凱旋記念に持ち帰って植えたものらしい」との言い伝えがあることが分かりました。
また寒風の中でも花を咲かせる木であることから、おそらくソ満国境かシベリアの原産であろうと推測し、名前に魯(露)西亜(ロシア)の「魯」の字と、桃に近い植物なので「桃」の字も入れることにして「魯桃桜」と命名し、天然記念物の申請をしたそうです。(※ただ実際の魯桃桜の原産地については諸説あり、はっきりとはわかっていません。)

今も天然記念物?

無事に名前も付き、旧県立図書館の庭にあった7本全てが昭和19年に長野県天然記念物に指定されました。その時根拠となったものは「史蹟名勝天然記念物調査会規程」(大正11年)ですが、その後昭和25年に「文化財保護法」が新設され、それを受けて27年には「長野県文化財保護条例」が制定され、同時に「史蹟名勝天然記念物調査会規程」は廃止されました。この時新しく設けられた天然記念物に指定するための基準には、魯桃桜は適合できませんでした。
しかしそれでもなお「みなし指定」により魯桃桜は天然記念物として認められていましたが、みなし指定の期限が「昭和40年3月31日限り」とされてしまったことにより、ついに長野県天然記念物から除外されてしまうことになりました。
したがって魯桃桜が天然記念物であった期間は21年6ヶ月であり、現在は指定されていません。

長野県内の図書館との関わり

昭和30年、旧県立図書館ではこの果実の核を蒔いて発芽した苗(実生苗)を県内の図書館に配りました。配布先の記録は残っていませんが、現在確認できるものは長野市立長野図書館や、市立岡谷図書館などです。
後に、魯桃桜は図書館だけでなく長野地方気象台や更埴保健所(当時)など県内各地に移植され、現在ではあちこちで見ることができるようになりました。

いつ頃咲くの?

魯桃桜の開花日は、長野地方気象台でも毎年記録が取られ、昭和55(1980)年までは旧県立図書館の魯桃桜を、昭和56(1981)年から平成14(2002)年までは長野地方気象台の魯桃桜をそれぞれ観測していましたが、現在は観測していないそうです。
しかしそうした過去の記録から推計すると、これまでの魯桃桜の開花日は平均して3月29日となります。ソメイヨシノの長野市における例年の開花日は4月上旬ですので、やはり魯桃桜は早咲きの花なんですね。

<参考資料>
書 名/著者名/出版社/出版年
魯桃桜と図書館(調査記録)/県立長野図書館/県立長野図書館/1994
県立長野図書館庭の魯桃桜について/落合照雄,久保田秀夫//1962